【ちいさなほしときらめくよるに:本編】





人ごみ。喧噪。大型ビジョンから男性ニュースキャスターの声が流れる。

[001]キャスター:続いてのニュースです。本日5月6日は、春の夜空に、みずがめ座η流星群が出現する見込みです。
この流星群はペルセウス座流星群並の年間最大流星数を誇る流星群ですが、残念ながら日本では地平高度が低いためそれほど多くは観測されません。もし観測できた方はとてもラッキーですね!
一説によると、流れ星とは亡くなった方が、最後に一目会いたい人のもとに、ほんの少しの光を届けようとして零れるものだとか。
今日は全国的に雲の少ない一日となる予想ですので、たまにはじっくり夜空を眺めてみるのもよいかもしれませんね…―――



(喧噪の中)

[002]夜:僕は夜。僕は暗闇、夜の闇。世界よ世界、今日も輝け。星に照って、キラキラと。
きらりキラキラ星降る夜に、僕は君に会いにゆく。


[003]未来:オリジナルボイスドラマ
[004]夜:「ちいさな星ときらめく夜に」





夕暮れ。街中を歩く未来。学校帰り。イヤホンから漏れるシャカシャカとした音。信号が赤になり、足を止める。
反対側の道に数名のJK。彼女たちも信号が青になるのを待っており、色々喋ったり笑ったりする声が聞こえる。


[005]生徒1:あーお腹すいたー
[006]生徒2:今日も練習キツかったもんねー
[007]生徒3:じゃあ、こないだできた駅前のマックよってかない?
[008]生徒1:いいねー!あ、そういえばそのマックでユミコの彼氏バイトしてるよね
[009]生徒2:知ってるっ知ってるぅー3組の山田くんでしょ?ウチの学年の顔だけ代表
[010]生徒3:うっそそんなアダナついてんの(笑)まあ、女とっかえひっかえで性格クソだからねー
[011]生徒1:そーそー。マジないよねー
[012]生徒2:えー、ユミコああいうのが好みなんだー
[013_お名前]生徒たち:キャハハハハハ!(※まじウケルーなど自由に続けて頂いても結構です)

[014]未来:(ため息)

未来、イラッと眉間にしわを寄せ、プレイヤーの音量を最大に。かき消される女子高生たちの声。
ほどなくして信号が青に変わる。





[015]夜:おねーさん


後ろから呼びかけられるが、未来の耳には届かない。

[016]夜:おねーさん

信号が青に。また歩き始める。

[017]夜:おっねーえさーーん!!!
[018]未来:っ!

未来、ようやく自分を呼ぶ声に気づき後ろを振り返る。

[019]夜:あは、やっと気づいてくれた。駄目ですよーそんなおっきい音立てて聞いてたら。聞こえるものも、聞こえなくなってしまいますよ?
[020]未来:……あなた誰
[021]夜:さーて、だれでしょう
[022]未来:さようなら。

夜はワザとらしくエヘっとはにかむが、未来がそっけなくまた歩き出そうとし、焦って止める。
未来の制服のブレザーを思い切りつかみながら、畳み掛けるように

[023]夜:わーーーストップストーーーーップ!!ですよねですよねーーー!! いまのご時世、こんな“夜分”に、こんな“人通りの少ない道”で、こんな見ず知らずの男に声かけられたら、そりゃそんな反応になりますよねーーーーー!!! でも無視だけはーー!!なにとぞ無視だけはーーーー!!!!
[024]未来:?


[025]未来:(夜の声に被せて、呟くように心の声)あれ、私さっきまで…
[026]夜:ねーーーー!おねーさんってばあーーー!

前に進もうとする未来。それを必死で押し留めようとする夜。
もともと子どもが苦手な未来は、とてつもなく迷惑そうに眉根を寄せながら、自分より幾分背の低い夜へと目線を合わせる。

[027]未来:っしーー!はぁ…もう。ボク。迷子かな?お名前とお家言えるかなー?
[028]夜:違いますよーぉ。僕はお姉さんに会いに来たんです。だってずっとこうして会いたかったから!
[029]未来:やっぱ帰る。(くるっと踵を返し)
[030]夜:うわぁちょっとまってーーー!!


[031]未来:2013年5月6日、はれ。雲ひとつない静かな月夜。学校帰りの私の前に、見知らぬ少年が現れた。

[032]夜:お姉さんお姉さん、それって制服ですよね?随分と遅くまで学校に残ってるんですね
[033]未来:遅くって…まだ8時前だよ
[034]夜:6時の鐘の前には帰らないと。怒られちゃうんですよ?
[035]未来:きみくらいの子はそうかもね


[036]未来:確かに初対面のはずの、8歳にも満たない年頃の少年。もう春先とはいえ夜はまだ冷えるというのに、ずいぶんと薄手の格好をしている。

夜の住宅街をなんとなしに歩く未来と夜。
(この時点で未来にとっては普段まったく覚えのない道を歩いているはずなのに、不思議と違和感を覚えてはいない)





[037]未来:あれ
[038]リンゴ:にゃー
[039]未来:…猫?
[040]夜:ああ…あなたに会いに来たんですよ
[041]未来:?
[042]夜:どうぞ、名前を付けてあげてください。あの猫はあなたに呼ばれたがっている
[043]未来:えええ…(いきなり何を…といった様子で)

<回想/ノイズ混じりに>

[044]未来(幼少):わぁっ猫だー!かわいいー!
[045]慈:ほんとうだぁ。名前つけようよ
[046]未来(幼少):そうだね!うーんと、んー…じゃあ、まんまるに寝そべってるから…

<回想終わり>

[047]未来:―――“リンゴ”
[048]リンゴ:にゃー
[049]夜:素敵な名前ですね。リンゴも嬉しそうだ
[050]未来:そう?ありきたりだと思うけど…
[051]夜:嬉しいんですよ。またあなたに会うことが出来て。名前を呼んでもらえて。
[052]未来:また…?


意味深にふふっと笑ってみせる夜。リンゴも満足そうに尻尾を揺らめかしている。
ぼんやりと夜の言葉を反復するようにつぶやく未来。

[053]夜:僕らが拾った、大切な猫です。可愛がってあげましょう。





夜は小さく微笑んで、ちかくの公園を指さす。


[054]夜:あ、公園だ!お姉さん、寄って行きませんか?ね?僕是非ブランコに乗りたいです。
[055]未来:公園…


<回想/ノイズ混じりに>

[056]慈:ぼくブランコだーいすき!
[057]未来:みくもー!
[058]慈:じゃあどっちが高くこげるか、競争だよ!

<回想終わり>

[059]未来:…っ
[060]夜:おねーさん?
[061]未来:なんでもない……
[062]夜:行きましょう。きっとお姉さんも楽しいはずですよ
[063]未来:?
[064]夜:公園。お好きでしょう?

夜、むじゃきな表情の中に、ほんの少しだけ懐かしさや寂しさをのぞかせて。





二人は公園のブランコに腰掛ける。
未来は控えめに地面を蹴る程度。夜は立ったまま大きく漕ぎ、ギコギコと音を立てている。未来、ふと思い返して

[065]未来:あれ、リンゴは?
[066]夜:ダンボールで家を作ってあげて、空き地でこっそり飼う事に決めたじゃないですか。忘れちゃったんですか?
[067]未来:いつ?
[068]夜:ずっと前。
[069]未来:ずっとまえ?だってあの猫はさっきあそこで…―――あれ?
[070]夜:ふふ。月曜と水曜と金曜は、お姉さんがごはんをあげる当番ですからね。
[071]未来:……うん

未来、少々腑に落ちない部分はあるが、あまり深く考えず。そうかな、そうだったかな、といった程度で。





[072]未来:ねえあなた…家、帰らなくていいの?小さいのに、こんな夜遅くまで一人でいたらママが心配しない?
[073]夜:あは、なにいってるんですか。家ならほら、公園の目の前。それに今はまだ夕方ですよ?
[074]未来:え、なにいって

未来、どこかふんわりとした気持ちであたりを見たわたす。
いつの間にか夜から夕方へ。カラスの鳴き声や豆腐売りのラッパの音が遠くから聞こえる。
よく見ると、未来と夜の他にも数名の子どもたちが遊んでいるようだった。


[075]子ども1:ボールなげるよー!
[076]子ども2:うわぁっ
[077]子ども1:ユミちゃんキャッチするのへったくそー!
[078]子ども3:あはは、へったくそー
[079]子ども2:もー!次はちゃんととるもん!
[080]こども1・3:あははははっ


[081]未来:あ………あれ…?
[082]夜:でも夜ご飯の前には、ちゃんと帰らなきゃ。ママが怒って家から呼びに出てくるから
[083]未来:そう……だね…?


<回想/ノイズまじり>

[084]未来母:あんたたちぃー?ちょっといつまで遊んでるの。ご飯よー!
[085]未来:はーい!
[086]慈:はーい!

<回想終わり>

[087]未来:…………?
[088]夜:お姉さん?どうかしましたか?
[089]未来:なんだか…その呼び方、が…
[090]夜:…じゃあ…なんて呼んだらいいですか?

<回想/ノイズまじり>

[091]慈:みーちゃん

<回想終わり>

[092]未来:(回想シーンとオーバーラップ気味に)“みーちゃん”
[093]夜:……みーちゃん。
[094]未来:うん


夜(――慈)にとっては懐かしいワード。嬉しそうに、悲しそうに、大切に呼びかける。
未来は何故だか分からないがしっくりくる感じがして、一度コクリと頷いた。

[095]未来:あなたは?
[096]夜:ないしょです
[097]未来:なにそれ。

[098]夜:みーちゃんはぁ、いま何を頑張ってるんですか?
[099]未来:特に……なにも……
[100]夜:それはそれは、退屈そうですね(笑いながら)
[101]未来:あなたは?
[102]夜:立派な星になることです
[103]未来:はい?
[104]夜:ぼくの夢だったんです。ずっとずっと
[105]未来:でもあなたは、もう星でしょ…?
[106]夜:あは、なに言ってるんですかー人間は星にはなれませんよ
[107]未来:えっ…ああ、そ…そう、…そうだよね…あれ、私何言ってるんだろう
[108]夜:へんなみーちゃん。
[109]未来:本当に、へんなの。
[110]夜:もしかして
[111]未来:え?
[112]夜:もしかして、だれかに、そう言われたんじゃないですか?ずっと…前
[113]未来:ずっと前
[114]夜:そう、たとえば

<回想/ノイズまじり>

[115]未来母:あの子はお星さまになったのよ

<回想終わり>

[116]夜:(オーバーラップ気味で)あの子はお星さまになったのよ
[117]未来:っ
[118]夜:なーんて。

夜、懐かしむようにそっとほほ笑んで。
未来は子どもらしく無邪気な夜と、時折覗かせる妙に達観した感じの夜とのギャップに違和感を覚える。

[119]リンゴ:にゃー
[120]未来:あ…
[121]夜:やあリンゴ。おや、なにか持ってますね

どこからともなく、リンゴの鳴き声。
てん、てん、てん…とボールがころがってくる。夜がブランコから降り、傍まで寄っていって、拾って未来に見せる。

[122]未来:ボール?
[123]夜:ええ。リンゴがどこからか持ってきたんでしょう。さっき遊んでた子たちが忘れて行ったのかな。
[124]未来:懐かしいなあ、キャッチボールとか。小さい時はよくやった気がする。
[125]夜:それは素敵ですね。さあ。
[126]未来:?
[127]夜:いきますよ、ほらっ!
[128]未来:わ、わわっ…!


夜、ニコニコとしながらボールを未来に向かって振りかぶる。
未来は急いでブランコから立ち上がり、少しオロオロとしながらキャッチ。


[129]未来:いきなり投げられてもキャッチできないわよ!
[130]夜:あははっ
[131]未来:もーっ……ほら、いくよっ
[132]夜:うわわっ…ちょっとー身長差考えてくださいよー!
[133]未来:あははっごめんごめん!
[134]リンゴ:にゃー
[135]夜:ああ、リンゴ僕が取りに行くから。そっちは車道で危な………ッリンゴ!!
[136]未来:あっ!ちょっとっ!!

[137]未来:そのとき私は

走り出す夜。それを追いかける未来。

[138]未来:猫を追いかける少年の後ろ姿に

クラクションの音。

[139]未来:なにかデジャビュめいたものを感じて……

未来、身体は焦って夜を追いかけるが、頭の中はどこかどこかぼんやりしながら。

[140]未来(幼少):いっくん!!!!!!!
[141]未来:いっくん!!!!!!!





車の通りすぎる音。
しばしの静寂。
車の運転手の「轢かれてぇのか馬鹿野郎!」の声。

[142]未来:え……?
[143]リンゴ:……にゃー
[144]夜:ぅ…み、ちゃ…苦しいです………みーちゃん?
[145]未来:あ……―――んの、馬鹿運転手!!前方確認くらいちゃんとしなさいよ!!もうすこしで子ども轢くところだったのよ?!リンゴもあんたも!!いったい何考えてんの!!!!
[146]夜:うわぁーごめんなさいごめんなさい!ほらリンゴっお前もはやく謝れ!!
[147]リンゴ:にゃー!にゃにゃにゃー(;゜ω゜)!(訳:ごめんマジごめん車来るとかマジ思わなくってさー!!)
[148]未来:今回は間に合ったからよかったけど!!!大体昔だってねぇ!!!!――――――あ、れ?え……?

未来、キレながら自然とボタボタと涙が流れ始める。言葉は自然と口を継ぐが、思考がそれについていかない。
夜はそれをじっと見つめて。

[149]夜:でも、今度は守ってくれた。
[150]未来:……?こん、ど?
[151]夜:いいんだ
[152]未来:…
[153]夜:いいんだ。なにも考えないで。なにも、思い出さないで。そんなこと、僕は望んでなんかいないんだから。…だから、涙は、―――止まる。そう。…そうやって。
[154]未来:―――(はなをすすって。涙が自然に止まってくる。)

夜が、まるで小さな子供におまじないを聞かせるように囁く。
その言葉を聞いたからなのか、未来の涙は不思議と引っ込んでしまった。

[155]夜:ありがとう、かみさま…

(ここからの夜の台詞は、たっぷりと時間をかけて頂けたら嬉しいです。彼にとっての一種の“懺悔”のシーンになります。
逆に、未来は「いきなり何言い出したのこの子…」といった感じ。2人の心情はまったくリンクしません。)

[156]リンゴ:にゃー
[157]夜:………うん。そうだね、リンゴ。―――もう、時間だ。
[158]未来:時間……?
[159]夜:―――神様がね、言うんです。もう時間だよ、帰っておいでって。
[160]未来:神様?じかん?
[161]夜:ずっと、頑張ったんですけど。ぼくはチビだから、どうしてもうまくいかなくて。
[162]未来:は?
[163]夜:僕は、みんなの期待に応えたかったのに。
[164]未来:ぼく?
[165]夜:みーちゃん
[166]未来:う、ん
[167]夜:みーちゃん……ッ
[168]未来:………
[169]夜:ごめんね、ぼくは、君のお星さまに、本当の最後まで、なることはできなかったよ……
[170]未来:ねえ、ちょっとさっきからなに言って
[171]夜:でも!(泣くのを堪えて、必死の笑顔で)
[172]未来:っ
[173]夜:みーちゃんは、今度は、ぼくを守ってくれた
[174]未来:わたし、が…?
[175]夜:そうだよ。きみが、守ってくれた。だから、ねぇ、みーちゃん…もう、いいんだよ。
[176]未来:もう…?
[177]夜:誰もきみを怒ったりなんかしない。だからもう、笑っても、楽しんでも、いいんだよ。幸せになって、いいんだよ。
[178]未来:………?
[179]夜:やくそく。やくそくだ。
[180]未来:やく、そく…
[181]夜:思い出してほしいんだ。僕にはもう、過去しかないけれど。きみには「みらい」があるってこと。……それだけ、どうしても、言いたかったんだ。
[182]未来:……
[183]夜:あのね、ぼくは。一緒に遊べて、本当に楽しかったんだよ。―――――ぼくは、みーちゃんのこと、いまだってずっと…
[184]リンゴ:にゃー(訳:時間だよー)
[185]未来:ちょ、
[186]夜:ああ、僕の星は、いったいどこにあるのかな………
[187]未来:ねえってば!!

[188]夜:小さすぎて、ぼくにはとても見えないや





人ごみ。喧噪。
イヤホンから漏れるシャカシャカとした音。

[189]未来:あ……あれ?ゆめ………?
[190]未来:(に、しては…やけに鮮明に覚えているし…普通、立って寝る?)
[191]未来、ぼんやりと歩きだして、人にぶつかる。
[192]未来:あっすいません…
[193]未来:(だめだ、私疲れてる。早く帰って今日はもう寝よう…)

家の扉を開き、未来帰宅。
テレビの音がうっすらと聞こえる。

[194]キャスター:…にしても、本当に痛ましい事件でしたね…
[195]リポーター:はい。現場は閑静な住宅地で、事件当時は亡くなった男の子のほかにも同級生の女の子が居合わせたそうです。

[196]未来:ただいまぁー
[197]未来母:あっ未来、だめ!!

[198]リポーター:佐々木慈君がひき逃げにあってから、今日でちょうど10年でした。まさか今になって犯人が自主してくるとは思いませんでしたね。

未来、かばんをその場にドサッと落とす。
未来母は急いでリモコンまでやってきて、テレビを消す。

[199]未来:(息を呑む)
[200]未来母:未来……
[201]未来:――――――――――!

未来の脳内を、幼少の頃の記憶が断片的にめぐる。(今までの夜の台詞をバーッと流す予定です)
さいごに「みーちゃん」という呼び声がどこかで聞こえたような気がして





[202]未来:―――――――い…っくん…
[203]未来母:(大きくため息)

[204]未来:(そう…だ…まだ幼い頃……隣の家に、幼馴染の男の子が住んでいて……)
[205]未来:(私の投げた、ボールを…猫が追って…)
[206]未来:(車が、いきなり、)
[207]未来:猫を助けようとして、いっ君が車道に飛び出した
[208]未来母:未来…
[209]未来:私は…それを………あ…ああ……
[210]未来母:未来やめなさい!!
[211]未来:〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!
未来は勢いよく玄関に駆け出す。乱暴に靴を履き、そのまま外へ。
[212]未来母:未来、未来ったら!!!おねがいやめて!!!戻ってらっしゃい!!!
[213]未来:はっはっはっ…いっくん……いっくん……!!!

未来は走る。
ついさっきまで、自分は慈と一緒に過ごしていたはずだ。
しかし、いくら走っても、あの公園にたどり着くことが出来ない。

[214]未来:はっはっ…いっくん、どこ?どこにいるの?さっきまで、さっきまでずっと一緒に……はっ…はっ……
[215]未来:いっくん。いっくんどこ?ねえいっくん………っ
[216]未来:いっくん!!!!!!!!!!!!
走りながら、ひときわ大きな声で名前を呼んでも、彼は現れない。
[217]未来:はっはっ……ふ……
[218]未来:(あのとき、私は、頑張って彼に腕を伸ばそうとしたけれど。大きな車が、とっても怖くって)
[219]未来:(あのとき、もっとはやく走れたら。もっとはやく、腕が伸ばせていたのなら)

[220]夜母:この人殺し…!慈を、慈を返してよ…!!
[221]夜父:おまえ、やめなさい…そんなことを言ったって、慈はもう…
[222]未来母:本当に…申し訳ございませんでした…!

[223]未来:(私がもっと、現実と向き合っていれたなら)

[224]未来(幼少):(声にならないような泣き声)
[225]未来母:未来…慈君はね、お星さまになったのよ
[226]未来(幼少):おほし、さま…?
[227]未来母:そう、だから、もう慈君の事は忘れなさい。慈君はお星さまになったの。…そう考えた方が、あなたの為だから…

[228]未来:最低だ…私。

[229]未来:(彼のことを忘れてた後も、あの街を引っ越した後も…心のどこかで、ずっと罪悪感に駆られていた)
[230]未来:(だれかと一緒にいることが怖くて、親しくなることが怖くて。誰にも気づかれないように、誰にも気に駆けられないように、いつも息をひそめて…)

[231]未来:そうやって、都合良く自分の罪悪にふたをした…!!!!

未来、走りながら、息切れと共に吐き出すように。自分の中の弱さに対し、心から自責の念を持って。

未来、暗闇に足を取られて思い切り転ぶ。色んな思いがグルグルと頭を巡って。

[232]未来:っ…





[233]未来:……それなのに

夜:『立派な星になることです』
(ここから先の台詞は使い回します。収録は結構です)

[234]未来:彼はばかだ

夜:『ごめんね、ぼくは、君のお星さまに、本当の最後まで、なることはできなかったよ……』

[235]未来:自分がいつか、星になったら、私がまた元気になるって妄信して

夜:『誰もきみを怒ったりしない。だからもう』

[236]未来:私が忘れてしまった後も、ずっとずっと私のために

夜:『幸せになって、いいんだよ。』

[237]未来:そばに―――いてくれたの……?

夜:『いいんだ。なにも考えないで。なにも、思い出さないで。そんなこと、僕は望んでなんていない。』

[238]未来:違うでしょ、あの時、本当は、本当は、もっと違うこと……

[239]未来:っごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんんさい、ごめんなさい…!!!いっくん…!!!!ずっと、ごめんね。ごめんねぇ………っ!!!!
[240]未来:っ………

未来、ふと空を見つめると夜空いっぱいの流れ星。ここらへんはなんかシャランッみたいなSEを流して表現する予定です。

[241]未来:ながれ…ぼし…………
夜:『あのね、ぼくは。一緒に遊べて、本当に楽しかったんだよ。―――――ぼくは、みーちゃんのこと、いまだってずっと…』

流星群の到来。夜空いっぱいに、星が降る。

[242]未来:いっくん……
[243]未来:私も……っずっと……だいすきだったよ…!大好きだよ…!!ふっ…うええ…うわああああああああああああん…!!!!!いっくん、いっくうううううううううううん!!!!!!!!!うわあああああああああああああああん!!!!!!!!!!

未来、大声で泣き出す。そのうえで、星はまた振り続ける。(泣き声は少し長めにお願いしたいです)
(※文字にしたらすごい間抜けみたいな感じになりました´・ω・`すいません)





数日後。
朝。目玉焼きの焼ける音。
もぞもぞとうごく布団。覚醒しきっていない未来。

[244]未来母:未来−学校遅刻するわよー
[245]未来:うぅぅ…ん……
[246]未来母:未来ー!聞いてんのーー?ちーこーくー!
[247]未来:はっ……はぁーーーい!

布団から出て、制服に着替える。鏡前で身なりをチェックして、階段を下りる。

[248]未来母:もう、朝から騒がしいんだから。あと5分早く起きられないかなぁ未来はー
[249]未来:すいませんねー
[250]未来母:ほらおべんと
[251]未来:ありがと


未来、慌ただしく靴を履いて、弁当の入った袋を受け取る。

[252]未来母:ほら未来、iPod忘れてる!
[253]未来:いらなーい。じゃ、行ってきまーす!
[254]未来母:…珍しい。あれだけ毎日ジャンジャカ鳴らしてたのに…

[255]未来:(いっくんへ。お元気ですか?私はまあまあ元気です)

通学路。
小さな小学生が未来の前を走り過ぎていく。

[256]子ども1:あははっおっせーぞー!
[257]子ども2:まってよおー!
[258]子ども1:まったないよー!
[259]子ども2:もーっ
[260_お名前]子ども1・2:あははははっ

[261]未来:ふふ

[262]未来:(あの日あなたは、きっと沢山の流れ星と一緒にとても遠いところに行ってしまったんだと思います)

高校。玄関。朝のざわめき。

[263_お名前]生徒みなさん:おはよー
[264]生徒4:あー昨日夜更かししちゃったわー
[265]生徒5:なにやってたのー?
[266]生徒4:ゲーム。新作出てさあ
[267]生徒5:あんたも好きだねえ(笑)

[268]生徒6:今日の宿題やったー?
[269]生徒7:昨学校に教科書忘れちゃってさー
[270]生徒6:あははーばかだー!
[271]生徒7:今日当たるのにー!

(※こちらはほぼガヤのような扱いになります)

[272]未来:(やっとあなたを思い出した途端に、その繋がりがプッツリと切れてしまったような気がして。随分勝手な事だけど、私はそれが、とても悲しくて…寂しかった)

[273]未来:あ、おは…
[274]生徒1:はぁ?
[275]未来:…おはよう!
[276]生徒1:―――ぷっ…おはよー
[277]未来:(ほっと一息)


[278]未来:(でも)

[279]生徒1:あー一限だるー
[280]生徒2:こんな天気よかったら勉強はかどんないわー
[281]未来:ちょっと…それいつもの事でしょー?
[282]生徒3:おー言うようになったじゃんかぁみーくちゃん?

[283]未来:(あなたが残したやくそくは、私のなかで小さな希望にかわりました)

[284]生徒2:藤崎ってさあ、最近よく空眺めてんよね。なんかあんの?
[285]未来:あ……うん。星がね、―――見えるかなって。
[286]生徒2:はぁ?ww朝っぱらから何言ってんのー
[287]生徒3:大丈夫かこいつー。
[288]生徒1:藤崎ってェーなんかいけ好かないイメージだったけど意外と抜けてるよねぇ
[289]未来:うっわしつれー!あんた達もたいして変わらないでしょー
[290]生徒1〜3:キャハハハハハッ
[291]未来:ぷっ…ふふっ

授業開始のチャイム。

[292]生徒4:あ、やばー1限移動だ
[293]生徒6:いそご!

[294]未来:(あなたはとうとう星になれなかったとこぼしたけれど…)

[295]未来:―――見えるよ、きっと。
[296]生徒1:藤崎ー置いてくよー?
[297]未来:あーちょっとまってよー

[298]未来:それがきっと、あなたの残したきらめきなのだと、私はそう信じています。





[299]未来・夜:ちいさなほしと、きらめくよるに
[300]未来:キャスト

[301]未来:藤崎未来、有澤 空
[302]夜:慈、武田 恵瑠々
[303]リンゴ:リンゴ、来生 華
[304]未来母:未来の母、ししゃも
[305]エキストラ:エキストラ、とぅら族
[306]エキストラ:野原 沙恵
[307]エキストラ:時津守 七
[308]エキストラ:みや。
[309]エキストラ:ちょこ様
[310]エキストラ:逢坂 真希
[311]エキストラ:結崎有理
[312]エキストラ:らっど。
[313]エキストラ:薫篠子
[314]エキストラ:むぎ

[315]夜:企画/制作、pipoworld.